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第7回「住まいとコミュニティづくりNPO交流会」の記録

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プログラム

 

8月27日(土)、銀座フェニックスプラザにおいて、第7回「住まいとコミュニティづくりNPO交流会」を開催しました。この交流会では、午前中は「劇場空間を活かしたまちづくり」と題する座談会を開催し、午後は、「住まいとコミュニティづくり活動助成」事業の2010年度助成対象団体による活動報告を行いました。当日の様子をご紹介します。なお、詳細につきましては、後日発行する報告書をご参照ください。


・日時:平成23年(2011年)8月27日(土曜) 10:30〜17:30(予定)

・場所:銀座フェニックスプラザ フェニックスホール(東京・銀座)
・主催:財団法人ハウジングアンドコミュニティ財団
・共催:住まい・まちづくり活動推進協議会
・内容:
・座談会「劇場空間を活かしたまちづくり」
・助成対象団体の活動報告及び情報交換

座談会(10:30〜12:20)
−劇場空間を活かしたまちづくり−
福島県南相馬市原町区「朝日座」
岐阜県中津川市加子母「明治座」
近年、「住まいとコミュニティづくり活動助成」において、古い映画館や劇場の保存・活用に関する申込が多く見られるようになりました。また、各地で閉館した映画館等をNPOが運営して再オープンしている事例なども目にします。人々に親しまれた劇場施設は、地域文化の継承等にも大きな役割を果たしていると考えられます。
そこで今回は、震災を踏まえこれから利活用を図っていくことを検討している施設と、すでに地域の拠点として活用されている施設に係る2団体のメンバーを迎えた座談会を企画しました。
はじめに、2011年度「住まいとコミュニティづくり活動助成」の助成対象団体「朝日座を楽しむ会」のメンバー、小畑瓊子さんから朝日座を活用した取り組みについて報告をしていただきました。次に、1894年に建てられた芝居小屋を現在も地域の心のよりどころとして活用推進を図る、「明治座活用委員会」の内木哲朗さんから活動経緯をお聞かせいただきました。その後、「住まいとコミュニティづくり活動助成」選考委員長の鈴木輝隆先生(江戸川大学 教授)をコーディネーターに、小畑さんと内木さんと共に地域における劇場空間の果たす役割などについて議論を深めていただきました。
小畑瓊子氏 内木哲朗氏

鈴木輝隆氏

(上左)小畑瓊子氏(上右)内木哲朗氏
(左)鈴木輝隆氏
 
福島県南相馬市原町区「朝日座」[クリックしてください:PDF186kb]
1923年に芝居小屋として建設されて、その後映画館に改築。映画産業の衰退で1991年に閉館。2008年、まちづくりの講習会で地域外の専門家から朝日座の存在意義を指摘され、朝日座を保存しようという機運が高まり、同年「朝日座を楽しむ会」が設立された。
URL:http://asahiza.blog.shinobi.jp/ http://asahiza-yoake.sakura.ne.jp/
岐阜県中津川市加子母「明治座」[クリックしてください:PDF409kb]
1894年に建設された芝居小屋。県指定重要有形民族文化財。地歌舞伎やクラッシックコンサートが毎年行われるほか、落語や映画上映などにも活用されている。観光バスも訪れる観光スポット。「明治座活用委員会」は、2001年、通年開館を目指して設立された。
URL:http://meijiza.jp/
をクリックすると当日使用した資料をご覧いただけます)

開会の挨拶

専務理事・篠原正積

専務理事・篠原正積
当財団の専務理事の篠原正積から、財団の現状や当助成事業の果たす役割や意義についてお話ししました。

活動報告 第一部

各団体の報告資料とともに、当日会場でいただいた質問とその回答をご覧いただけます(回答がない団体もあります)。
なお、神吉紀世子氏、図司直也氏、矢郷恵子氏の3人の選考委員は、第19回の選考時から選考委員となっており、今回の報告の対象となった団体の選考(第18回)には関わっておりません。
1.えき・まちネットこまつ|山形県川西町
活動のテーマ:町民駅を中心にしたまちづくりひとづくり
http://www5.omn.ne.jp/~eki-mn-7/

渡部さやかさん(報告者 左)
江本一男さん(右)
[クリックしてください:PDF9580kb]
[クリックしてください:PDF8kb]
報告概要:
町民駅を地域の活性化の核とするため、まちむら交流、駅のコミュニティーの拠点化、特産品開発とその産業化、次世代育成等の取組みを行った。

選考委員のコメント
神吉紀世子氏(京都大学 教授)

頼もしい学生の方々の活動を具体的に聞かせていただき、大変参考になりました。小中高校生が活動しているまちづくりは、全国にはいくつもあると思います。しかし、本当の活動の中心的主体になっておられる事例はそう多くはないかもしれません。
 「子どもの参画」の議論では若い世代の人たちが参画するまちづくりのもっとも高いステージは、若い世代の人達が考え、行動し、さらに自分のまわりに影響を広げて、本当の主体になることだと言われています。「えき・まちネットこまつ」はまさにこの事例だと大変感銘しました。また、全国の公共交通のなかには、きびしい状況にあるところがいくつもあると思いますので、多くの人達にたいへんな勇気を与える事例だと思います。こうした活動が、全国に広がっていくといいなあと心から思います。


2.特定非営利活動法人 森の学校|栃木県那珂川町
活動のテーマ:月島・健武 もんじゃでどんなもんじゃ

http://www.morinogakkou.jp/

報告者:徳本洋子さん
[クリックしてください:PDF639kb]
[クリックしてください:PDF7kb]
報告概要:
都市と農山村の子ども交流キャンプの実施等により、木造の廃校舎を活用した地域の再生を目指すとともに、銀座での写真展を実施し、月島の生ゴミの堆肥化を模索した。

選考委員のコメント
神吉紀世子氏(京都大学 教授)

耕作放棄地や廃校になった建物などを活用する活動は各地にあると思いますが、「森の学校」のすばらしい点は、一度使われなくなったところをもう一度現役の場所として蘇らせるところだと思います。なかでも、耕作放棄地は無農薬の取り組みの適地であるという指摘には、目から鱗が落ちる思いがしました。また、そのことが、もう一度活動させていく取り組みにとってどれほど大きな役割を果たすのか、とても印象的でした。
 報告では会場に木の種を飛ばしたりと、二つほど“飛び道具”が登場し楽しむことができました。活動を説明する際にはいろいろな表現をしていかなればいけないのだな、とも改めて感心しました。


3.池尻ロマンス座|東京都世田谷区
活動テーマ:映画のような「まち」づくり〜映画で地域の活性化を

URL:http://www.nanoni.co.jp/romance/
BLOG:http://romance-the-movie.seesaa.net/
YOUTUBE:(2編に分れてます)
http://www.youtube.com/watch?v=yJL2LBuBxO8
http://www.youtube.com/watch?v=zRM1sTiROA4
報告者:洪基樹さん
[クリックしてください:PDF1255kb]
[クリックしてください:PDF8kb]
報告概要:
廃校を拠点に映画鑑賞と多世代交流を継続しながら、高齢者からの聞き取り等を踏まえ、学校にまつわる映画作りを模索し、その中で、自らの活動に関する映画を製作した。

選考委員のコメント
神吉紀世子氏(京都大学 教授)

 「池尻ロマンス座」の報告でもっとも印象深かったのは、親子関係や、おじいさん・おばあさんと孫、という家族の世代間の伝承ではなく、場所や地域のつながりによる個人と個人の関係の中であっても、記憶や思い出、昔の話や知恵をきちんとつないで伝承していけるということです。何かの縁で集まってきた他人同士であっても、その人達の間で世代を超え、近しい形でものごとを受け継ぐことができるということはとても重要なことです。こうした地縁や血縁ではない人達が集まる形でいろいろな価値あるものごとが継承されていくという現象は、都市的なことであるように見えますが、農村を含めてどこでも必要なことではないかと思います。
 また、そうした場では、それぞれの人の恋愛や結婚の話がきっかけになることが多いということは非常におもしろいと思いました。個人的な話題のようにみえて世代を超えてみんなが話せる話題なのだということは印象に残りました。


4.いのちとくらしのフリースペースねまりや建ち上げの会|新潟県佐渡市
活動テーマ:子どもと共にてしごとから暮らしのいのちを発掘する

http://d.hatena.ne.jp/nemariya77
報告者:原田雅代さん
[クリックしてください:PDF1601kb]
[クリックしてください:PDF7kb]
報告概要:
昔ながらの暮らしの場−家−を、世代を超えて協力しながら手しごととして建ち上げることにより、子どもたちや若い世代に「命ある学び」を体験させることを目指した。

選考委員のコメント
図司直也氏(法政大学 准教授)

 「ねまりや建ち上げの会」は、暮らしの中に根付いた子どもたちの学びの場を作っていく活動ですが、そこに踏み込んでいく過程で、子どもたちの背後に地元の学生のみなさんが関わり、それに地元の手に職をつけた方たちが見守り、さらに何をやっているかは知らずに興味を持って寄って来るおじいちゃんたちが囲んでいくという、子どもたちへの囲み方がとても素敵だなと思いました。また、そうしたことを含めて、「ねまりや」の場づくりが非常に素敵だなと思いました。
 報告の中で「地元のじじ・ばばの知恵を譲ってもらう」というコメントがありましたが、この「譲ってもらう」という地元に対する謙虚な姿勢が、地域の人達の思いを呼びよせているのではないでしょうか。
 おそらく、今後登場する人達は、地域のおばあちゃんやお母さんたちではないかと思います。「暮らし」というところに立つ時に、経験豊かな女性たちが出番を控えて待っていらっしゃるのではないでしょうか。主催者は、おそらくそのあたりのことも念頭に置かれていると思いますが、ぜひ地域ぐるみで巻き込んでいくような活動に育てていただきたいと思います。
 そうすることで、いまは手弁当でやられている活動が、地域の人達やよそ者達によって「ねまりやさんの活動をどう支えていけばいいのか」と、経済的な部分も含めて議論していく場としても育っていくのではないかと思います。


5.特定非営利活動法人 循環の島研究室|新潟県佐渡市
活動テーマ:「生きものとの協働」拠点整備による限界集落再生
報告者:平原匡さん
[クリックしてください:PDF206kb]
[クリックしてください:PDF7kb]
報告概要:
老朽化した御堂を、人が集えることができ、地域のシンボルともなる施設として改修整備するとともに、牛耕復活のための取組みや薪能を通して都会の若人との交流を進めた。
選考委員のコメント
図司直也氏(法政大学 准教授)

 「循環の島研究室」の活動の根っこには限界集落という重いテーマがあります。私も全国を歩くなかで、いわゆる限界集落を訪ねることもありますが、そうした地域の中で一歩を踏み出す取り組みがあることに、まず非常に感銘を受けました。
 限界集落が弱まっていく一つの兆しとして、話し合いをする場が失われていくということがあります。戸数が減っていくので、わざわざ集会所や公民館に集まらなくても、家に訪ねていけばことが済むので、集会所や公民館がいらなくなってくるのです。「循環の島研究室」ではまず地域の中の公民館の改修に取り掛かっています。地域の拠点をもう一度蘇らせる時に、古いトイレをバイオトイレに改修したり、電気を引くといったノウハウが実践の中で語られていました。
 限界集落では空き家の話がよく出ますが、この報告によって、公民館や集会所の老朽化が進むということも大きなポイントになるのだな、ということを学ぶことができました。
 さらに、話し合いの場を作るだけでなく、薪能を復活させていこうとすることで地域の人たちの拠り所としてつないでいく。あるいは、牛耕を復活させてブランド米を作っていくという、ある意味でお金を回して産業につないでいこうという夢も描いています。外から人が入ってきて公民館を改修するだけでなく、地域が経済的にもう少し自立をしていくような仕組みにつなげていこうとされていることに、非常に感銘を受けました。
 私は阿蘇で牛の放牧の研究会などにも関わっていますので、何か応援ができればと思いました。

6.おたすけキッチン準備会|岩手県花巻市
活動テーマ:食でつながる土沢コミュニティプロジェクト
http://www.nagayagurashi.com/meal.html
報告者:斎藤百合子さん
[クリックしてください:PDF2411kb]
[クリックしてください:PDF8kb]
 
報告概要:
複合施設の共同建て替え事業に合わせ、地域に暮らす女性たちが起業して地域の台所を目指しテナントとして入居するため、チャレンジショップの実施や経営の検討を行った。
選考委員のコメント
図司直也氏(法政大学 准教授)

 地域の女性グループがコミュニティビジネスで起業するという事例ですが、これまでもそうした活動は農村部などで展開されてきています。しかし、「お助けキッチン準備会」がそうした取り組みとちょっと違うように感じました。これまでの女性グループの起業の多くが、どちらかというと同世代の人たちの楽しみを目的に立ちあげられていました。そのため、10年、20年と続けるうちに、みなが同じように年をとり、世代交代が進まなくなり、その結果、停滞を余儀なくされたり、解散するというところが続出しています。
 お助けキッチンのメンバーは、48歳から74歳、しかも8人というかなり精鋭揃いで、ビジネス感覚を取り入れながら継続的な展開をしようとされています。そこがこれまでの地域の女性グループのコミュニティビジネスとは色合いが違うように思います。
 運営が安定するまでには、まだまだ大変なこともあるようですが、報告の中に「覚悟ができた」という言葉があったように、今後につながる下地はしっかりできてきていると感じました。
 今後のことを考えると、8人ですべてをまわしていくのは大変でしょうから、お年寄りへのお弁当や惣菜の提供、子どもたちの食育という目的に合致した形で、どのような主体とどんなコンビを組んで事業を展開していくのかという部分が鍵になるのではないかと思います。地域の中での協力者――報告の中にも民生委員さんが出ていましたが、子どもの食育の分野の方々などともうまく結びつきながら展開していってほしいと思います。

活動報告 第二部

7.八尾スローアートショー実行委員会|富山県富山市
活動テーマ:地域とアートと学校と〜拠点化と継続化を目指す

http://ysas.web.fc2.com/
報告者:山口尚之さん(右) 宮袋智美さん(左)
[クリックしてください:PDF3760kb]
[クリックしてください:PDF8kb]
報告概要:
校庭などをいかしたアートプログラムや木造校舎の利活用のための調査、意見交換会などにより、地域に残された貴重な木造の小学校校舎の有効活用を目指した。
選考委員のコメント
矢郷恵子氏(KOPA 代表 毎日の生活研究所 代表)

 日本各地で木造校舎が廃校になり壊されています。壊されてしまった木造校舎は今後二度と建つことはないでしょう。また、それまで人が息づき、元気があった場所から、突然人がいなくなるのを見るのはとてもつらいことです。
「八尾スローアートショー実行委員会」の活動は、そうした場をどう元気づけていくかという活動です。その方法として非常にスマートなやり方をしていますね。
 アートの力によって地域の人が集まり地域を動かしていくわけですが、地域の方々から信頼を受けているからこそできているという、基盤の強さが感じられました。また、若い人達がこの活動に取り組んでいるということが、地域にとってとても良いですね。
 ただ、学校という場所は校庭が広く、建物に生活臭さがなく、使い方も限られていますから、活動がやりづらいのではないか、特に生活臭い活動をするのはさらに難しいのではないかと思っています。
 子ども達へのワークショップが、子ども達にとってどのように刺激的で、魅力的なのか、その点を詳しく話していただけると、この取り組みが少しちがった形で見えてきたように思います。今後展開していくにあたっては、何に取り組んで、取り組んでいることが地域住民の心や表現にどうつながっているのかがポイントになると思います。アートですから美しさを育てていくところが芯になっていく。その部分が強く出ていくことが今後につながっていくと感じています。

8.特定非営利活動法人 こえとことばとこころの部屋|大阪府大阪市
活動テーマ:生活保護受給者の地域貢献活動参加および生きがい作りプログラム

http://www.cocoroom.org/
報告者:岡本マサヒロさん
[クリックしてください:PDF2180kb]
[クリックしてください:PDF9kb]
報告概要:
生活保護受給者等に、地域の歴史や地理を学ぶ会や夜回り活動にボランティアとして参加してもらったり、イベントに関与してもらうなど社会参加の場づくりを模索した。

選考委員のコメント
矢郷恵子氏(KOPA 代表 毎日の生活研究所 代表)

 最初にこの団体名を聞いた時は、どこでなにをやっているのだろうかと戸惑いました。しかし、本日の報告を聞き、対象地域の人達に声をかけ、相手も声を出すようになり、会話をするようになって言葉というセンテンスが表れ、こころを取り戻していく。そんな過程を釜ヶ崎という地域で行っていることが理解でき、納得できました。
 「コミュニティ」という言葉が初めて英語に登場するのは12世紀の終わりだと聞いたことがあります。修道院の活動を通して生まれてきた言葉で、そこで共同で暮らし、作物を育て、それを販売して収入を得ていくことがコミュニティの原点ですが、さらに大事なことは、コミュニティには宗教があるということです。つまり、こころの部分がきちんとしていないとコミュニティは育たない。「こえとことばとこころの部屋」の活動は、こころをどう育てるかということを大切にしていて、それがまさにコミュニティを作る大きな原点になっていくのだと感じました。
 アメリカでは、コミュニティデザイナーという専門家が、ホームレスのように社会に恵まれない人たちに仕事をつくり、生活をつくり、最終的には尊厳とのふれあいを育てていく活動、「生きていてよかったなあ」と感じられる社会を作っていくための活動がありますが、そうした活動が日本にもあるのだと勇気づけられました。
 頂いたパンフレットに英訳がつけられていました。これは釜ヶ崎には英語を話す短期滞在者のような方がたくさんいるからだそうです。こういうところに目を向けるところにも心遣いを感じます。


9.宇陀松山華小路実行委員会|奈良県宇陀市
活動テーマ:まちへの気づきと参加のシステムづくり

http://cha-nomisuke.blog.ocn.ne.jp/udasengen/
報告者:田川陽子さん
[クリックしてください:PDF211kb]
[クリックしてください:PDF7kb]
報告概要:
地元の特産品であるダリアについて学ぶとともに、路地に飾るためのデザイン募集等を経て、多くの参加者によって路地をダリアで飾り、地域の活性化を目指した。
選考委員のコメント
矢郷恵子氏(KOPA 代表 毎日の生活研究所 代表)

 とても女性らしく、きれいで、儚い活動だと思います。私は儚さも市民が行うまちづくりの一つの要因だと思います。ダリアという花をきっかけにまちを見なおす。まず気になるものを手に持ってみる、美しくなることがうれしい……、そんなことがまちづくりの原点になると思っています。報告者から「まちに作用するものがやりたかった」という言葉がありましたが、まさにそこがうまく活かされている活動ですね。
 予定していた場所にダリアを並べるだけですと、その先の発展が気になるのですが、拾われていった花がいろいろなところに飾られたり、町のあちこちが会場のように使われていくという“付録”の部分が、この活動のおもしろさと思いますし、この“付録”があるからこそ、2年目、3年目が楽しみになっていきます。
 ただし、こういう活動では、継続するための動機がとても難しくなります。その動機をどう付けていくのかということを、みんなで考えていく、するとさらによくなるのだろうと感じています。

10.特定非営利活動法人 まちづかい塾|岡山県瀬戸内市
活動テーマ:「汐まち・人まち・牛まろび」でよっこら処!

http://www.michicafe.net/
http://blog.canpan.info/michi-machi
http://www.tencoroan.com/
右:藤本まりこさん(報告者 まちづかい塾)
中:中村和美さん(てんころ庵 代表)
左:武内文子さん(てんころ庵 事務局長)
[クリックしてください:PDF2629kb]
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報告概要:
公共空間の有効活用を目指す団体が、空き家も地域の公共空間であると捉え、住民に馴染み深い空き家を高齢者等の集える地域の茶の間(てんころ庵)として整備した。
選考委員のコメント
高見沢実氏(横浜国立大学 教授)

 「まちづかい塾」の報告は、コミュニティが高齢化によって弱っていくなかで、自分達にできることは何かということを地域の人達が考え、それを専門家の方が外から支援された事例です。
 報告者の方が、地域の方々が選んだ建物を「こんなボロ屋でいいのかな」とおっしゃっていましたが、私はそんなことを言ってしまっていいのかとヒヤヒヤしました。しかし、それだけ正直にコミュニケーションができるということは、信用があるということでもあります。おそらく、専門家として地域に入る前から地域の方から出てきたいろいろな声を聞き、専門家の観点からそっと正しい方向に導いておられるのではないかなと思います。そうしたことをしながら、コミュニティにとって大切なモノを作られたということがすばらしいと思いました。

11.おいもを愛する会|広島県呉市
活動テーマ:おいもラブ・ステーション・プロジェクト

http://ameblo.jp/oimowoaisurukai/
報告者:谷脇けいこさん
[クリックしてください:PDF3615kb]
[クリックしてください:PDF7kb]
 
報告概要:
おいもの栽培を広げ、栽培したおいもをいかしたイベントを実施するとともに、おいもラブステーションとして地域内外につながりの輪を作り出してその連携を強化した。
選考委員のコメント
高見沢実氏(横浜国立大学 教授)

「おいもを愛する会」の現地に行った選考委員の間では「おいもはいいぞ、おいもはすごいぞ」と口々に言われていましたが、私は2〜3ページくらいの申請書を見ただけでしたので、正直に言うと「そこまで言うほど何がいいの?」と、ちょっとわかりかねていました。しかし、今日の報告をお聞きしてよくわかりました。おいもはすばらしい!!
 本日の会場であるこのビルの屋上ではミツバチを飼い、銀座産の蜂蜜を採っています。私の大学の近くの町でも同じようにミツバチを飼い、蜂蜜をとっています。こうした蜂蜜の活動と「おいもを愛する会」の活動はつながっていると思います。ミツバチを飼うというと町の人が関心を示し、花を植えてミツバチがやってくると、「うちの花にミツバチが来たよ」といった会話が始まります。また、イベントを行い、蜂蜜をパンに塗って子どもたちと一緒に食べたりしていると、それもだんだんと会話につながっていくそうです。
 お芋でもそういったコミュニケーションがきっと生まれているのだと思います。たかがお芋と思うかもしれませんが、決してそうではないのです。
 物を通して人と人とのつながりができるということには、かなりの普遍性があると思います。すぐに始められ、楽しく活動を広げられるという点も一つのモデルパタンになるのではないかと思います。
 非常に楽しそうにやられている活動報告を聞いて、私も楽しくなりました。

12.特定非営利活動法人 映画保存協会|東京都文京区
活動テーマ:蔵再生:谷根千アーカイブズの創設
http://www.filmpres.org/
報告者:石原香絵さん
[クリックしてください:PDF17.8mb]
報告概要:
谷根千工房と事務所のシェアを開始し、事務所に続く蔵の1階の活用と貸し出しを行うとともに、2階を谷根千工房関連資料を収蔵するアーカイブズとして公開に向けて整備した。
選考委員のコメント
高見沢実氏(横浜国立大学 教授)

 古い映像を保存したり、それをアーカイブにし、そのための拠点を作るということは非常に重要なことです。
 実は先日、私が活動している横浜で、ある印刷屋から何十年も前のフィルムが出てきて拝見する機会がありました。当時としてはかなりハイカラな生活をされていた様子がそのまま写っていて、私は改めて、映像の重要さというのはこういうことかと知った気がしました。
 建物の修復などのモノを応援していくことも重要だと思いますが、映像からは当時の生活スタイル、建物のようす、何を着ていたのか、何を食べていたのかといったことが理屈抜きにわかります。映像を通して自分たちの町の歴史や文化を再認識し、それを次の世代につなげていけるという意味でも非常に重要な活動だと思いました。さらに、その拠点を作って広げていくというのは、とてもすばらしいと思います。
「映画保存協会」の活動は、おそらく全国的な活動、もしかしたらインターナショナルな活動になっているのではないかと思います。今後、各地で悩みながらやっている文化的な活動、フィルムだけでない文化的な活動もより広がっていくように応援していただきたいと思います。

選考委員による全体の感想

(手嶋尚人氏は都合により欠席されました)

 
神吉紀世子氏
 それぞれの地域にある「普通」の日常の暮らしの中に、これほど豊かなものがあったということを改めて感じました。しかし同時に、そうした豊かさを掘り起こし、かなりの力を入れて残そうとしたり復活させようとしないと消えてしまう。そうした危機感も共通しているように思いました。普通の暮らしの中に蓄積されてきた豊かなものを見なおしていく動きが各地の市民のまちづくり活動のなかの重要な主題の1つであり、そうした再発見と新しい継承方法の確立への動きの中に私達はいるのだということを、全体を通して感じました。
図司直也氏

 私は、もともと農学部で農業経済を専攻し、特に中山間地域や過疎地域など条件不利地域に赴いて、現場のみなさんのお話を聞かせていただいたり、お仕事をさせていただいています。期せずして、私が現場を歩いて感じている部分と重なる3つの事例へコメントをさせていただきました。この3つ以外にも感動した事例がいくつもありましたが、ハウジングアンドコミュニティ財団の助成が、さまざまな活動のプロセスを積み上げて歩まれているというところに価値を見出しているのだということを改めて思いました。

矢郷恵子氏
 すべての活動報告を聞かせていただき、最後に思ったのは、地域づくりやまちづくりには「これでいい」というマニュアルはないということ。どんな活動でもいいので、『思いきってやること』がすごく大事。例えば、佐渡の活動では、思い切りのよさが物事を育てていくという部分がありました。
 活動によっては1年、2年、3年で終わってしまうこともありますが、小さくてもいいから、自分はこんなことをやりたいのだ、この土地があってこの家があったらこんなことができるかもしれないという動機が意気込みになります。そして、最後に「まちづくりは楽しい」と思えたとしたら、その地域の中に何かが育っているのだと感じています。
高見沢実氏
 「おいも」から「アート」まで、ハウジングアンドコミュニティ財団の助成先は本当に多様です。逆にいいますと、みなさんの活動がいかに多様であるかということなのだと思います。多様性は活力の源。さらにいろいろな可能性にチャレンジしていただければと願っています。

総評 鈴木輝隆氏(江戸川大学 教授)
鈴木輝隆氏
 まず、活動報告をしてくれたみなさん、最後まで会場で聞いてくださった皆さんにもお礼を申し上げます。ありがとうございました。
 さて、本日報告した団体は、昨年選考されたところです。その後、日本社会に大きな影響を与えた東日本大震災が起こりました。助成対象団体の選考にあたって私達は、時代性、社会性、地域性という視点も含めて考えますが、今日の報告を聞かせていただき、大震災があり社会が大きく変わっても必要なことは変わらないのだと感じました。
 イギリスの詩人のワーズワースは、「生なくして富は存在しない。富は生以外にはない。富はそのような生の充実を支える物や力の働きである」ということをいっています。
 あの震災の時に、かけがえのないもの、地域社会固有の文化が津波によって無残にも流れていってしまったことをテレビなどで見て、誰もが驚き、心を痛めたことと思います。私達の多くは、そのことを大震災によって知ったわけですが、実は現代の市場経済では、そこから外れてしまうものは消えていってしまう。固有のものがどんどん消えていってしまっているということを、今日のみなさんの報告を聞いて気付かされたのではないでしょうか。
 私がいろいろな地域を歩いていて一番感じることは、「幸福の扉は外向きに開かれている」ということです。現場ではそれほど豊かな生活をしている人ばかりではありません。なかにはびっくりするような生活をしている人もいますが、どこであっても、幸福の扉を外向きに開こうとしていますし、生なくして富は存在しないということを示しています。
 もう一つ、みなさんの活動に共通しているのは、自分の道を自分らしく歩いているということです。自分の道を、当たり前のように自分らしく歩いているということは、意外と難しいことです。しかし、今日の高校生の報告がそうであったように、自分たちの足で、自分たちで自分たちらしく、どうやって生きていくのか、つながっていくのかということを追求し続けている姿を拝見して、まちづくりが本当に自分らしく生き始めている、まちづくりが変わり始めているのかもしれないと思いました。
 私はローカルデザイン研究会というものを10年近く主宰していますが、今年の3月11日の大震災に衝撃を受けて、13日から活動を始めました。被災地に行っていろいろな人の活動も見させてもらいました。そこで感じたのは、しなやかなものは簡単には折れないということです。長い時間がかかっても、立ちはだかる壁を越えていく、しなやかに生きていく生き方に感動を覚えました。
 さらに付け加えますと、こうした助成の選考をする時には、書類に書いている言葉と実態が違うということがありますが、みなさんの報告ほど言葉と実態が一致している事例は少ないのではないかと思います。選考にあたっては、事前に財団も選考委員も活動の実行性などを調べるわけですが、調べても調べきれないことがあります。私達はすべての現場を訪ねて選考するのではなく、皆さんの言葉で選ぶしかないわけですが、それが実態と遊離していないということはすごいことだと思います。今日の報告を聞かせていただいて、企画書を上手に作るだけではなく、言葉と現実が遊離していない素晴らしさを感じました。
 昨年の助成対象団体は、応募総数192件の中から2年間の特別助成も含めて15件、今年は221件の中から10件、特別助成も含めて13件が選ばれました。それだけの倍率を超えてきたみなさんの活動の現場に行かれるだけ行き、みなさんが自分らしく生きている姿を学びたいと思っています。 
 ハウジングアンドコミュニティ財団の選考委員を務めさせていただいたことは、私の人生にとって大きな宝です。現場を見て、今日の報告を聞いたことで、また宝が増えました。このような役割をさせていただいたことに感謝申し上げます。今日は本当にご苦労様でした。ありがとうございました。

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 

フライヤー
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